(7)命令形
4つの基本型が修得されたなら、次は実践型へ行ってみよう 「命令」 俳句の技法で命令形を用いる場合は、社会一般の通念とちがって、 命令を発する主体者はすべて作者なのだ そして、命令を受けるのは、大別して、一つは作句の対象となる ものであり、もう一つは、なんと作者自身なのだ 1.作者から対象一般へ 2.作者から作者自身へ つまり、俳句においては、単に上位に立つ者から下位の者への 伝達ではなく、心への呼びかけと言ってもいいかもしれない 例句 松籟も寒の谺も返し来よ 小林康治 ショウライモ/カンノコダマモ/カエシコヨ 青野に吹く鹿寄せ喇叭貸し給へ 西東三鬼 アオノニフク/シカヨセラッパ/カシタマエ 逝く吾子に万葉の露みなはしれ 能村登四郎 ユクアコニ/マンヨウノツユ/ミナハシレ ががんぼよ飛べ水煙の天使まで 橋本鶏二 ガガンボヨ/トベ/スイエンノ/テンシマデ そしてまた、 柿若葉多忙を口実となすな 藤田湘子 落葉降りやまず急ぐな急ぐなよ 加藤楸邨 蟇歩くさみしきときはさみしと言え 大野林火 手放しに命は惜しめ寒波来る 殿村菟絲子 俳句のリズムを越えた「句またがり」になっているものもある 命令は意思表示の現われでもある 俳句では、感動を「うれしい」「たのしい」と簡単な言葉で述べて 終ってしまうのではなく、一度飲み込み、こころの奥底から沸き上がる 何かを、吐き出すことによって詩に昇華しようとするのだ 草木虫魚、他人に対して命令するというより、 呼びかけるという態度が好もしい つまり、命令も一種の挨拶ととらえて詠ってみよう (-。-)y-゜゜
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