鷹1990年1月号
芒山星の光のとどきけり
どこかに似たような俳句が有りはしないかといつも
心配になる。所詮、十七文字と季語。家中の歳時記
を広げまわし、例句に無いことを確認する。
鷹1992年3月号
つら
鮟鱇の面と黄金バツトかな
ニ物衝撃は難しい。鑑賞者の記憶力によって極端に
衝撃度合が異なる。手術台の上のミシンとコウモリ
傘の出会い以後、おいそれとは首肯できない。
鷹1993年4月号
種袋さかさにあけてしまひけり
俳句とただごとの境界が未だに心もとない。しかし、
以前はこんな些細なことに心動かされるようなこと
はまずなかった。
鷹1995年9月号
真剣は人切る重さ朴の花
金工の師から刀剣審査会場で「覚えておきなさい」
と柄を外す作法を見せてもらった。鍛えられた日本
刀は、明らかに美しい武器であった。
鷹1997年4月号
父よ寒きか肋一本失へば
父母の句は極力詠わない。しかし油断するとポロリ
と現れてしまう。マイナスの自乗がプラスになるよ
うな、父へのオマージュでありたい。
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