1991年 第19回 鷹新人賞作品より 顳かみに当たるを虻と気付くまで 泣けるだけ泣いてぶつかき氷かな ねこじやらしほんとにぼけてしまひけり 笑ふやうに開く錠前や豊の秋 菊人形襟つかまれて運ばるる 秋深し土掘れば穴できあがる うすらひに婚期おくれてしまひけり 真剣に恋して猫や文京区 椿寿忌の全員に日の当たりたる 籠枕より頭が落ちて未婚なり 泳ぎつくところ決まりてより泳ぐ 喰らふことすなはち子規の忌を修す
鷹新人賞「受賞のことば」より抜粋 長谷川等伯の「松林図屏風」が好きで、・・・・・・・・ 僕が俳句を始めたのは、その屏風に描かれた世界に憧れ、少 しでも近付きたかったからにほかならない。動機は極めて純 粋かつ風雅であったのだ。 それがどこでどう道を誤ったのか、等伯とは似ても似つか ぬ軽薄な句ばかり作るようになってしまった。実に無念では あるが、今しばらくは様子を見るしかなかろう。一体全体俳 句はぼくをどこに連れて行こうとしているのか。全くもって わからない。
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