轍 郁摩 |
恋ひ恋ひて我に賜る恩寵の太刀の刃こぼれ凄まじきかな 水欲りて濁流まねく夢違い駿馬の産を問ひただしをり 罪と罰やさしくむごく若武者の鎧ほどきて肩ぬぎの肌 言の葉はやさしかれども花石榴忘れむとぞ忘れむとぞ謀りぬ まくなぎに有りと思へる重力の万象の誤差祈りてやまず 音みなのやむときわれの息聴けり残酷に滅ぼしたき世界 消息のとぎれとぎれを嘉しをり菖蒲(あやめ)の藍の濃きひとところ 風さやぐ天の河原に漁(さなど)りし歌姫うたを忘れたまへり 煉獄の風ぞ恋ほしき炎熱の寝汗に冷ゆる後朝(きぬぎぬ)ならむ 「太刀恋ふは古き漢(をとこ)よ」汚さざる手もて滅ぼす惑星ゲーム 天蓋のふた落ちゆける暗黒を二藍(ふたあゐ)の瞳(め)の神の子見きと 詠はざれば歌は死の翳やすらけく蘇鉄葉強(こは)き男の館 乱は藍青、恋は紺青 凛凛といのち散らせし昔思ほゆ ふしだらに生きしものみな美しきシャワー壊るる水無月の乱 変身を願ふ汝(な)の髪いくたび切らん泰山木は死を見下ろせり 蛍たつ闇の草葉を濡らしつつ別るる恋の肉冷めやらず 転生の夢も見ざりき麻須羅夫の肋骨(あばら)の数の足らざりけるや よこしまに枇杷すする音雫してガリレイが視し公転周期 神の名を三度唱へし不覚なり抱擁の腕無毒と化せり いにしへを明日につながむ今日ならね花鳥星辰暮れむとすらん |
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