ＴＡＮＫＡ・　短　歌　・ＴＡＮＫＡ

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タイムトラベル２０１９（抄）五首

大和なる花の夜空の月明かり君に過ぎたる時差八時間　　　

我知らず我を知らざる国人の赤き砂漠に眼（まなこ）洗へり

突き抜けて天在りしかどきりぎしの黒きモノリス動き始めぬ

いざやいざ不知火立てとはやせども櫂無き舟に瞑るまなこよ

戦にて死なざる後の戦後なり帝変はれど菊の大輪　　　　　

古代アッシリアの遺跡から発掘された粘土板には、
太陽系惑星の公転周期の公倍数になる
ニネヴェ定数が記されていた。
インターネットに残された短歌や俳句や文字は、
果たして未来の地球人に理解できるのだろうか。

以下、轍 郁摩 作

『厳かに目覚めよ』

愛を問ひ眠りを問ひてたましひの在り処を刺せば血は流れしか

秋風に名宣りてあればかたち生す「HAL」と呼ばれしコンピューターよ

鴨遊ぶ今朝の川面の静かなれ枯葦色の暖かきかな

クリックの今朝のメールの一通に令室の死が並びてをりぬ

死と生と　愛欲深きわれなればてのひらの雪融かしすすらん

　轍　郁摩　（1996年03月　玲瓏36号より）
静かなる乱世

　轍　郁摩　（1991年10月　玲瓏21号より）
夏風渡る

　轍　郁摩　（1991年03月　玲瓏19号より）
まほろば

　轍　郁摩　（1990年12月　玲瓏18号より）
２００１年

　轍　郁摩　（1990年08月　玲瓏17号より）
魚族の鰓

　轍　郁摩　（1990年06月　玲瓏16号より）
鯨と鯢

　轍　郁摩　（1990年04月　玲瓏15号より）
五感の扉

　轍　郁摩　（1989年12月　玲瓏14号より）
われなるや

　轍　郁摩　（1989年07月　玲瓏13号より）
時空の砦

　轍　郁摩　（1989年02月　玲瓏12号より）
やさしき統計学

　轍　郁摩　（1988年10月　玲瓏11号より）
愛染の首

　轍　郁摩　（1988年07月　玲瓏10号より）
乱は藍青

SS-PROJECT （加藤治郎、穂村弘、荻原裕幸）の萩原氏より
リンクのお知らせがありました。深く感謝申し上げます。　　

短歌や俳句が力を持つには、旧勢力・権威に負けない新鮮な感
性による作品発表の場と交流が必要と考えます。そのためには
インターネットは格好の手段といえます。枠組が完成される以
前に、自分達で自由なフォーマットを創り出す機会も残され、
マルチメディアとして開拓すべき劇場ではないでしょうか。　

その後を知らず語らず吹く風の見えぬちからぞ怖るるな夢