轍 郁摩 |
一夜百首歌なすことはたやすけれ然れども虚言に満つる辻占 生と死と銀かがよへる太刀魚の切られ売らるる温石(おんじやく)の街 飢ゑとほき日本生まれのライオンが獅子と呼ばるる檻錆びゆけり 男死に絶ゆる後華ひらく罌粟方舟「MORE」の種子きらびやか 契りおきし国の名知らずとぐろまく蛇ぬめやかにその身をほぐす 父と子の戦のごとし月満ちてまことしやかに菖蒲湯あふる つひにわれ麻疹(はしか)知らざる一世なれ青き光芒額貫ける レコード針降ろす寸前ためらへり「アトランティス」の黴のうすずみ 麦秋の真青の落雲雀天の暗黒視し報いとぞ 歌は歌なす枕詞がふつふつと時空の砦見上ぐるばかり |