轍 郁摩 |
麗しき比例のさまの下剋上十六進に指足らざるを 眼下なる青き地球に雲の渦乱世恋ひしき馬よりもなほ ぬるま湯の無風の海に水母浮きジャーナリストの死のごとくあり 黒潮に突き出す岬恋ふるとは空海伝に星呑みしとぞ 潮かぶるカメラ幾台長身の髪かきあげて波迎撃す サングラスとれば幼き瞳もありぬ群狼にほど遠き黒革 薄明に色ある影を見てしより真黒き影を罪とぞおもふ 「われなるや」去年の野分に風まさり庭の紫苑をかき乱すかな 忘れずよ悪しき迷ひの花鬱金石見の浜に波打ち返す 青々と目にしむ木賊愛恋のクラリネットの簧(リード)研かん 脳細胞破壊ウイルス逆探知 奥歯の穴にしみ入る清水 暗黒の天に咲きをる百合あらば馬頭星雲くれなゐ発す 染め抜きの幟汚れて戦果つ肥満の鳩の飛び立ちかねつ 百年の祭り過ぎつつ自由なる土佐の赤き血人恋ふなかれ 北天の座標の狂ひいやまさり百億年後に歌はほろびよ |