1990.12

2001年

轍 郁摩

文人と詩人と歌人と俳人と最初に笑ふものに幸あれ

詩歌とふ予言のことば紡ぐとき扉のノブのかくも重たし

推論型アンドロイドを求めつつチェスに飽きたる我ら何せむ

人類の夢にあらはるものなべてかみの図面に慌て記されし

縞馬と白馬の化石おもふとき古代恐龍華やかなりし

怠惰なる神もゐませる 創造の小(ち)さき頭脳を人間(ヒト)に与へき

美人画家の線が具象を越えむとて夭折近き光放てり

莫逆も斬首もわれの身内にて汗に光かれる刀痕の額

一生とふ終の栖のおもはゆき花橘の香こそ咎なり

夜は獣 東の国の名をなのり昴ぞ今宵高く耀ふ

持続なき天分の才よ ためらひて匕首に彫る青竜一匹

契約を破棄せし神の名を呼べりすでに天蓋秋の気配ぞ

プログラム組みつつ思ふ推論の怒りのやり場なにあたふべき

憤怒もて昇る梯子の段多し思想足らざるほどが好まし

明けぬとて明けざる夜を訝しみ2001年抱擁の肩


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Ikuma Wadachi